「いきなり意表を突かれた」

http://www.chunichi.co.jp/00/desk/20060204/col_____desk____000.shtml

「北東」と「東北」

 「日本、中国、韓国を含んだ地域を日本では『北東』アジアと呼ぶ。なぜ『東北』アジアではないのか。『東南』アジアを『南東』アジアとは呼ばないのに」

 いきなり意表を突かれた。先日、中日懇話会で講演した東大教授・姜尚中(カンサンジュン)さんの言葉だ。在日二世で、日朝問題などに精力的に発言する気鋭の政治学者。冷静な語り口と明快な論理は、テレビの討論番組と変わらなかった。

 彼は続けた。「それは英語の『ノース・イースト・エイジャ』をそのまま訳して使っているからです。中国でも、韓国でも東を先に『東北』アジアと言っているのに、日本だけが北を先にしている」

 日本では、方角を「東西南北」の順で言い表すように、伝統的に東西が基軸だ。「日出(い)ずる国」であり「西方浄土」の思想が根強いからだろうか。「東奔西走」「西も東も分からない」といった言葉も多い。南や北より先に持ってくるのが普通で、特に地域を指す場合はほとんどそうだ。国内の東北地方も、北東地方とは呼ばない。確かに「北東アジア」は例外と言える。

 中国は現代でこそ「東南西北」の順が一般的だが、かつては日本と同じ「東西南北」。韓国もやはり「東西南北」という。いずれにしろ東は北より先で「東北アジア」の呼称は伝統にのっとっている。

 一方、英語圏は「北南東西」の順で、逆に北と南が基軸である。フランスやドイツも同じだ。欧米では、太陽より不動の北極星を中心に据えるためという説もある。

 なぜ日本は英語の借り物を使うのか。姜さんは「東北アジアについて、日本が真剣に考えてこなかった」からにほかならない、と指摘した。

 そして「明らかに戦後の日米関係の反映でもある。冷戦の中で米国は、日本を中国・韓国から切り離し続けた。日本は米国を迂回(うかい)してしか関係を築けず、ついに六十年間、外交の軸足を東北アジアに伸ばすことはなかった。日米二国間症候群です」。

 卓見である。たった二文字の順序の違いから、この国の歴史と政治の在りようが鮮やかに浮かび上がってくる。考えさせられた。

 (名古屋本社編集局長・加藤幹敏)

「それは英語の『ノース・イースト・エイジャ』をそのまま訳して使っているからです」へー、そうなんだ。
なぜか直訳だと真剣に考えてないことになるみたいです。
とすると、「サウス・イースト・エイジャ」をそのまま訳さないのは日本が東南アジアについて真剣に考えてきたからということになるな。そうなのか?
「明らかに戦後の日米関係の反映でもある」ってことは、戦前は「東北アジア」と呼んでたんでしょうね。
ていうかぐぐると「東北アジア」も普通に使われてるみたいなんだが…どこでの用法をもって「日本では〜」と言ってるんだろう?お役所か?学会か?
だとしたら公文書や学術用語は誤解を招かないことが大事だから青森・秋田・山形・岩手・宮城・福島の6県とかぶる語をあえて避けたんじゃないのかと思うんですけど。
中国の東北もよく後ろに(旧満洲)って補足入るしな。日本の東北地方と中国地方とまぎらわしいから。
頭が疑問符だらけになる文章ですね。
さすが気鋭の政治学者。明快な論理だな。
さすが東大教授。卓見である。考えさせられた。