ある直木賞作家の流すデマ
おーい、大変だ!みんな聞いてくれ!横浜マリノスの選手が集団レイプ事件を起こしたらしいぞ!
はいはいきっこきっこ。あっさり信じないでください。どう見てもデマです、本当に(ry
えー、デマなんだ…。だったら訴えられたら勝ち目ないでしょ、コレ。有名ブロガーがそんな危険な橋渡るかなぁ。火のないところに煙は立たないって言うし。
…あなたみたいな人がいるからデマは消えないんですね、やれやれ。ところでデマといえば、前回取り上げた本
- 作者: 石黒幸雄
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2001/04
- メディア: 単行本
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ある直木賞作家が、ある本の中で、トマトジュースの原料にされるトマトは、収穫してから畑の横に野積みにして、農薬をかけて保存しておくなどと書いていた。生産者や工場の現場が、どんなに苦労して新鮮なトマトを出荷、製造しているか知っている私は、その本を読んだとき、顔がカーッと赤くなるほど腹が立ったものである。
トマトだけに顔真っ赤か。うまいね。
いや別にそういう意味じゃないと思う。
スミマセン。
この「ある本」というのはたぶん篠田節子先生の直木賞受賞作「女たちのジハード」のことですね。
- 作者: 篠田節子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2000/01/01
- メディア: 文庫
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夫婦と別れ、ふと見るとトマト畑の片隅の脇に屋根だけの小さな小屋があり、そこにトマトのいっぱいに入ったプラスティックのコンテナが重ねてある。中の真っ赤なトマトは、どれもしなびている。
「あれは、どうするの?」
エンジンをかけている松浦に、康子は尋ねた。
「メーカーのトラックが取りに来るんで、用意してあるんだよ」
「毎日、出荷するんじゃないの?」
「いや、三日に一度。あれは熟したあとも、もつように開発した品種だから、日陰においておけば大丈夫なんだ」
「でも、あんなにしなびて……」
「毎日、回収に来るとコストがかかるからしかたないよ」
メーカーの「新鮮なトマトを絞った」と言う宣伝文句は嘘じゃないか、と憤慨しながら、康子はさきほどもらったばかりのトマトを一口かじる。
「あ、だめ」
松浦が叫んだ。
「ああ……食べちゃった。農薬かけたばかりだっていうのに」
ぎょっとして康子はコンテナのあった方を振り返った。
「収穫まじかに農薬なんかかけるの?」
「かけなきゃ、とてもじゃないけど作れないよ。あれ一杯七百五十円だもの」
「あれって?」
「だから、さっきのコンテナさ」
えっ、と耳を疑った。コンテナの大きさは、横60センチ、縦40センチ、高さも40センチくらい。前に松浦がトマトを入れてきたのと同じものだ。
「二百五、六十個はあるわよね」
先週の金曜日、同僚と行った飲み屋で頼んだ冷やしトマトが、一皿、二個分、七百円だった。生食用と加工用の違いはあれ、ほとんど覚醒剤並みの末端価格だ。どこでどう決められた引き取り価格なのか、開いた口がふさがらない。
これはひどい。こんなの読んだらトマトジュースは農薬漬けの古いトマトの絞り汁だと思っちゃうよな。
実際のトマトジュースの製造過程は、前出の「トマト革命」によると以下のようになってるそうです。
最初のトマトが工場に入荷するのは、その年の天候によって左右されるが、だいたい七月の上旬だ。ちなみに去年(二〇〇〇年)の「初荷」は七月五日だった。どっと大量に入荷するのは七月中旬から。このころから、各地のトマトジュース工場はフル操業体制に入る。従業員総出でお盆返上だ。なにせ一年一二ヵ月のうち二ヵ月だけが勝負なのだ。工場には連日、トマトを満載した一〇トントラックがつぎつぎと乗りつけ、搬入されたトマトはそのはしから、どんどんジュースにされていく。
この間、トマトが何日も野積みにされることはない。畑で摘みとられたトマトは基本的に二四時間以内にジュースになっている。完熟したトマトはきわめていたみやすいから、時間が勝負なのだ。
もし、一〇トントラックが運んできたトマトの山の中に、たった一箱(二〇キログラム入りである)でも腐りかけたトマトが混じっていて、それをいっしょに洗ってつぶしたら、すべてのトマトジュースがパアになってしまうので、トマトの品質管理にはこれ以上ないほど神経質になる。極端な話、トマトは収穫したその瞬間からいたみがはじまっているぐらいのつもりでいる。
うーん、よく考えたら口に入るものを作ってるんだから品質管理をきっちりするのは当然なんだけど、知識がなかったらデタラメもうっかり信じかねないのが怖いな。
大手は零細農家を搾取してあくどいことやってるに違いない、とか、サッカー選手なんて体育会系馬鹿で女とヤルことしか考えてないんだ、とかの偏見持っていると嘘をついて貶めることに抵抗がなくなるし、怪しい話も信じたくなってしまうんでしょうね。
しかし、メーカーも災難だな。直木賞受賞作だからかなりの人が読んだだろうし、あくまでフィクションです、と言い張られたら文句のつけようがない。
カゴメはまだ弁明できたからマシですけどね。作中に「長野にある大手メーカーの工場」とあるから、ほかに考えられるのはデルモンテ(キッコーマン)さん、ナガノトマトさんかな。
ナガノトマトはブログに力を入れているな。
見てると、自分たちの製品に誇りを持って一生懸命やってるのがわかりますね。
おいしいトマトジュースをありがとう。