赤い部屋はいかに改装されたか?

わたしもカテゴリー[狼少年]でたびたび取り上げてきた斎藤貴男先生が、オーマイニュースで大人気のようです。コメントの伸びが凄いですよ。

はいはいクマクマ。斎藤先生って存在自体が釣りなのにね。こんなやつ本当にいるわけないだろ 常識的に考えて…(AA略

石原知事の支持者に言いたい。あなた方は本気でこの外道に共感しているのか。それはそれで自由だ。だとしたらしかし、もう人間であることをやめた方がいい。衷心から忠告させていただこう。

ゲンダイのこれなんか釣り針がモロ見えだし。

バカなことを書いて敵失を捏造するのが工作員の仕事とはいえ、もう少し趣向を凝らしていただきたいですね。最近のは陰謀と妄想のぶち上げ方があまりに粗雑すぎて芸になってないですから。MMRのクオリティーを見習ってほしいな。

とはいうものの、最近だと毎日新聞の「推理小説のセオリーに従えば」ってのはけっこう面白かった。「改憲潮流」ってのもジョジョ第二部っぽくてナイスだ。

でも、そうそう面白がってばかりもいられません。官製「腐れサヨク」を踊らせて大衆がリベラルな言論を嫌悪するように仕向けるという卑怯な計画は今この瞬間にも進行しているのですから。

そういえば、自らの国家や民族に固執する右翼系の若者が世界的に増えているという事実も、多少気になるところだが…もとい、斎藤先生のような右翼工作員の活躍を見てると、江戸川乱歩の「赤い部屋」っていう作品に出てくる、罪に問われない殺人法を語る男のことを思い出すよ。

 或る日のことでした。私がある大通りを歩いていますと、向こうからその強情者の按摩がやってくるのに出会いました。彼は生意気にも杖を肩に担いで鼻唄を歌いながらヒョッコリヒョッコリと歩いています。ちょうどその町には、きのうから下水の工事がはじまっていて、往来の片側には深い穴が掘ってありましたが、彼は盲人のことで片側往来どめの立札など見えませんから、なんの気もつかず、その穴のすぐそばを呑気そうに歩いているのです。
 それを見ますと、私はふと一つの妙案を思いつきました。そこで、
 「やあN君」と按摩の名を呼びかけ……よく療治を頼んでお互いに知り合っていたのです……「ソラ危ないぞ、左へ寄った、左へ寄った
 とどなりました。それをわざと少し冗談らしい調子でやったのです。というのは、こういえば彼は日頃の性質から、きっとからかわれたのだと邪推して、左へは寄らないで、わざと右に寄るにちがいないと考えたからです。案の定、彼は、
「エヘヘヘ……ご冗談ばっかり」
 などとこわいろめいた口返事をしながら、やにわに反対の右の方へ二た足三足寄ったものですから、たちまち下水工事の穴の中へ片足を踏み込んで、アッという間に、一丈もあるその底へ落ちこんでしまいました。私はさも驚いたふうを装って穴の縁へ賭けより、「うまく行ったかしら」と覗いて見ました。
 彼はうち所でもわるかったのか、穴の底にぐったりと横たわって、穴のまわりに突き出ている鋭い石でも突いたのでしょう、一分刈りの頭に、赤黒い血がタラタラと流れているのです。それから、舌でも噛み切ったとみえて、口や鼻からも同じように出血しています。顔色はもうまっ青で、うなり声を出す元気さえありません。
 こうして、この按摩は、でも数時間は虫の息で生きていましたが、ついに絶命してしまったのです。私の計画は見事に成功しました。誰が私を疑いましょう。私はこの按摩を日頃ひいきにしてよく呼んでいたくらいで、決して殺人の動機になるような恨みがあったわけではなく、それに、表面上は右に落とし穴のあるのを避けさせようとして、「左へよれ、左へよれ」と教えてやったわけなのですから、私の好意を認める人はあっても、その親切らしい言葉に、恐るべき殺意がこめられていたと想像する人があろうはずがないのです
 ああ、なんという恐ろしくも楽しい遊戯だったのでしょう。巧妙なトリックを考え出したときの、おそらく芸術家のそれにも匹敵する歓喜、そのトリックを実行するときのワクワクした緊張、そして目的を果たしたときの言い知れぬ満足、それにまた、私の犠牲になった男や女が、殺人者が目の前にいるとも知らず、血みどろになって狂い廻る断末魔の光景、最初のあいだ、それらが、どんなにまあ私を有頂天にしてくれたことでしょう。

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

善意を装った殺人者、リベラルの皮をかぶった極右、どちらも絶対安全地帯から罠を仕掛けてほくそ笑んでるっていうのが許しがたいです。まるでキルバーンみたい。

まさに外道!というセリフがここまで似合う連中はそういませんよ。そんなわけで本日自民党新総裁に曽根しん、もとい安倍晋三先生が選出されたわけですが、安倍先生におかれましては今後は工作員を使った姑息な世論操作をせずに堂々直球勝負していただきたいな、と思いました。

○○ガイ*1を演じる権力の犬にわざと噛み付かせる、という手法はやっぱり健全じゃないですからね。そんなことをして深刻な問題から国民の目をそらしても一時的なものだし、いずれ言論をもてあそんだツケは必ずまわってくるのですから。